バッテリーを搭載した工事不要の低消費電力カメラが登場したことで、気軽に防犯カメラを設置できるようになりましたが、運用する際はいくつかの注意点があります。今回は低消費電力カメラを使用する際の注意点と向き・不向きを含めたメリット・デメリットについて解説いたします。
1. 低消費電力カメラとは
低消費電力カメラとはバッテリーカメラの別名です。バッテリーカメラとは、有線ケーブルで電源を送ることなくバッテリーでカメラを駆動させるカメラです。バッテリーの容量は限られているため、撮影していないときはスタンバイモードになっており、人が通ったことを検知してカメラが起動し録画するカメラです。スタンバイモード時の低消費電力で稼働していることから低消費電力カメラとも呼ばれています。
従来の防犯カメラは電源ケーブルや通信ケーブルの配線工事が必要で、設置場所が限られるうえに工事費用もかかるのが一般的でした。低消費電力カメラはこうした課題を解決した新しいカテゴリのカメラです。電源コンセントがない場所でも設置でき、賃貸住宅でも壁に穴を開けずに取り付けられる製品も多く登場しています。WIFIと組み合わせることで、スマートフォンからリアルタイムで映像を確認したり、検知時にプッシュ通知を受け取ることも可能です。
常時録画カメラとの違い
一般的な有線防犯カメラは24時間常時録画が基本ですが、低消費電力カメラは検知時のみ録画する「イベント録画」が基本です。この仕組みの違いがメリットにもデメリットにもつながります。
| 比較項目 | 低消費電力カメラ | 有線防犯カメラ(常時録画) |
|---|---|---|
| 電源 | バッテリー(+ソーラー) | 有線(AC電源・PoE) |
| 設置工事 | 不要 | 配線工事が必要 |
| 録画方式 | 検知時のみ録画 | 24時間常時録画 |
| タイムラグ | あり(起動に数秒) | なし |
| バッテリー管理 | 必要 | 不要 |
| 月額費用 | クラウド利用時に発生 | 基本なし(NVR録画) |
| 設置場所の自由度 | 非常に高い | 配線可能な場所に限定 |
2. 低消費電力カメラのメリット
低消費電力カメラには従来の有線カメラにはない魅力的なメリットがあります。
① 工事不要で今すぐ設置できる 電源ケーブルも通信ケーブルも不要なため、設置工事が必要ありません。壁面への取り付けも小さなネジ1本程度で完了する製品がほとんどで、賃貸住宅や集合住宅でも導入しやすいのが大きな魅力です。
② 電源がない場所にも設置できる コンセントのない屋外の壁・フェンス・樹木・電柱など、従来のカメラでは設置が難しかった場所にも取り付けることができます。農地・畑・山間部の建設現場・駐車場の隅など、配線を引けない環境での監視を実現できます。
③ 設置・撤去・移設が簡単 取り付けが簡単なため、引っ越しや模様替えの際も気軽に移設できます。季節やイベントに合わせて設置場所を変えるような用途にも向いています。
④ 導入コストが低い 配線工事費用が不要なため、システム全体の初期費用を大幅に抑えられます。1台から手軽に始められるのも低消費電力カメラの魅力です。
3. 低消費電力カメラの問題点(デメリット)
低消費電力カメラの問題点としては、スタンバイモードから復旧する際に録画データにタイムラグが発生してしまい、肝心なところが撮影できていないという点です。実際に映っていなければ意味がありませんので、低消費電力カメラは設置する際に向きや角度・位置に注意して設置する必要があります。
タイムラグが生じる仕組み
低消費電力カメラはスタンバイ中、カメラのイメージセンサーや録画モジュールへの電源供給を停止しています。PIRセンサーが人や動物を検知した瞬間にこれらのモジュールへの電源供給が再開されますが、センサーやソフトウェアが起動して実際に録画を開始するまでに数秒のタイムラグが発生します。
このタイムラグの間に侵入者がカメラの死角に入ってしまったり、肝心な行動が映像に記録されないといったリスクがあります。設置角度を工夫して「カメラが起動するまでの数秒間でも対象が画角内に留まる」位置を選ぶことが重要です。
その他のデメリット
バッテリー切れのリスク: バッテリーが切れると録画が完全に停止します。充電を忘れていた・気づかなかった期間に限って不審者が侵入するといった事態を防ぐため、日常的な残量確認とソーラーパネルの併用が重要です。
夜間の赤外線照射距離が短い: バッテリー駆動のため、夜間の赤外線LEDに使える電力が限られます。有線カメラと比べて赤外線の照射距離が短く、暗所での撮影可能距離が制限される製品が多いです。
寒冷地での電池性能低下: リチウムイオンバッテリーは低温環境で電圧が低下し、通常より早くバッテリー残量が減る傾向があります。冬季の寒冷地では充電頻度が上がることを念頭に置いておきましょう。
4. PIRセンサー
低消費電力カメラはスタンバイモード時にカメラの電源が切れているわけではありません。何をしているのかというとPIRセンサーのみ稼働させて、カメラの周囲を警戒している状態になっています。PIRセンサーとは人感センサーとも呼ばれており、周囲の温度との温度差を検知してアラートする機能です。周囲の温度差がないと検知しませんので、夏場などは検知しにくくなり、検知精度は下がるのが低消費電力カメラの特徴です。
PIRセンサーの仕組みをもう少し詳しく
PIR(Passive Infrared)センサーは、生物(人・動物)が発する赤外線(体温による放射熱)を感知して動作を検知するセンサーです。「Passive(受動型)」という名前の通り、自ら赤外線を発するのではなく、外部からの赤外線を受け取って検知します。このため消費電力が非常に小さく、長時間のスタンバイ状態を維持できます。
検知精度に影響する要因
気温(外気温)の影響: PIRセンサーは「周囲との温度差」を検知します。真夏の屋外では気温が体温(約36〜37℃)に近づくため、温度差が小さくなり検知精度が低下します。逆に冬場は温度差が大きくなるため検知しやすくなります。
検知角度と距離: PIRセンサーには検知できる角度(視野角)と距離に限界があります。一般的な製品で検知角度120°前後・検知距離5〜12m程度のものが多いです。カメラの設置位置でPIRセンサーの検知範囲が対象エリアをカバーできているかを確認してください。
小動物・虫による誤検知: 猫・犬・鳥などの動物や、夏場の大型の昆虫もPIRセンサーに検知されることがあります。誤検知が多い場合はPIRセンサーの感度設定を調整するか、後述のAOV機能と組み合わせたAI検知(人体・車両のみを選別)で対応できる製品を選ぶのが効果的です。
5. ソーラーパネルとの併用
低消費電力カメラはバッテリーのみで運用する場合、バッテリー切れに合わせて充電が必要になりますので、思わぬタイミングで充電切れになっている可能性もあります。侵入者やトラブルがあった際に充電切れだったでは済まない話になりますので、充電切れにならないように日々のメンテナンスが重要になります。とはいえ、ずっと意識し続けるのは難しく、そこで活躍するのがソーラーパネルです。ソーラーパネルは太陽光によってバッテリーを充電することで、バッテリー充電する手間を減らして導入することができます。
ソーラーパネル設置時の注意点
ソーラーパネルは非常に便利ですが、効果を最大限に発揮するためにはいくつかの条件があります。
日照条件の確認が最重要: ソーラーパネルによる充電は、日照時間が十分に確保されている場所でのみ安定して機能します。北向きの壁面・木陰・建物の影になりやすい場所などでは発電量が不足し、バッテリー切れを起こしやすくなります。設置前に1日を通じた日当たりを確認しましょう。
パネルの角度と向き: ソーラーパネルは太陽光が直角に当たるほど発電効率が上がります。日本では南向き・角度30〜40°程度が最も効率的とされています。カメラの設置角度とソーラーパネルの向きを別々に調整できる製品を選ぶと設置の自由度が高まります。
冬季・梅雨時期の発電低下: 日照時間が短い冬季や、雨天が続く梅雨時期は発電量が大幅に低下します。このような季節でもバッテリー残量が一定以上を保てるかどうか、製品のバッテリー容量と消費電力のバランスを事前に確認することをおすすめします。
パネルの汚れによる発電効率の低下: ソーラーパネルの表面に積もった埃・花粉・鳥のフンは発電効率を低下させます。半年に1回程度、柔らかい布と水で表面を清掃する習慣をつけましょう。
6. AOV機能
最近の低消費電力カメラにはAOV機能と呼ばれる機能が搭載されたカメラが登場しました。AOV機能とは低消費電力時にスナップショット(静止画)を定期的に保存しておくことで、先ほどのデータの欠落を防ぐことができる機能です。タイムラプスのような機能で、撮り逃しをなくしつつ電力消費も抑えることができる画期的な機能です。今までの低消費電力カメラでは欠落してしまったような映像をしっかりと残すことができるようになりました。AOV機能はあまり認知されていないのですが、実際にはかなり重要な機能で、この機能を搭載した低消費電力カメラにすることを推奨します。
AOV機能の具体的な動作
AOV(Always-On Video)機能は、スタンバイ中でも一定間隔(たとえば1〜5分ごと)に静止画を自動撮影して保存します。これにより、PIRセンサーが反応しなかった時間帯でも「その時間に何があったか」を静止画で確認することができます。
たとえば、カメラに気づいた侵入者がゆっくり動いてPIRセンサーを回避したケースでも、AOVの定期スナップショットにその姿が写っている可能性があります。また、センサーが検知した瞬間より前の状況を静止画で把握できるため、事後の状況確認に役立ちます。
AIとの組み合わせでさらに進化
AOV機能に加えて、AI解析機能(人体・車両の選別検知)を搭載した低消費電力カメラも登場しています。PIRセンサーとAI解析を組み合わせることで、小動物や車のヘッドライトなどによる誤検知を大幅に減らしつつ、人が接近した際には確実に検知・録画するという高精度な運用が実現できます。購入の際はAOV機能とAI検知機能の両方を搭載したモデルを選ぶと、より安心して運用できます。
7. リチウムイオン電池の取り扱いについて
低消費電力カメラに搭載されているリチウムイオンバッテリーですが、取り扱いには注意が必要です。リチウムイオンバッテリーは熱や衝撃に弱く、最悪の場合、発火事故につながる可能性もあります。直射日光が長時間当たる場所や雨に直接当たる場所への設置は極力避けた方が無難です。廃棄する際も自治体に合わせた方法で処分するようにしてください。またバッテリーをご自身で交換するのも、事故が発生する可能性があるので、メーカーに修理依頼を出すようにしてください。
リチウムイオンバッテリーの特性と安全な使い方
リチウムイオンバッテリーは、スマートフォンやノートパソコンにも広く使われており、エネルギー密度が高い反面、適切な取り扱いをしないと発熱・膨張・発火のリスクがあります。防犯カメラで使用する際は以下の点に注意してください。
高温環境への設置を避ける: バッテリーの動作保証温度は一般的に−20℃〜60℃程度ですが、真夏の直射日光下では外気温が40℃を超える日もあり、加えてカメラ本体が太陽熱を吸収することでバッテリー温度がさらに上昇します。南向きの壁面や黒い素材の取付面など、特に熱がこもりやすい場所では注意が必要です。
膨張に気づいたらすぐに使用を中止する: バッテリーが膨張(ふくらみ)を起こしている場合は、劣化が進んでいるサインです。そのまま使用し続けると発火リスクが高まります。膨張に気づいた場合はすぐに使用を停止し、メーカーまたは販売店に相談してください。
充電しながらの連続使用を避ける: ソーラーパネル充電との併用は問題ありませんが、バッテリーを充電しながら長時間連続使用すると発熱しやすくなります。過充電保護回路が搭載された製品を選ぶことをおすすめします。
廃棄はリサイクルボックスへ: リチウムイオンバッテリーは一般ごみとして捨てることができません。家電量販店や自治体の小型充電式電池リサイクルボックスに持ち込んで廃棄してください。一般社団法人JBRCのウェブサイト(https://www.jbrc.com/)で全国の回収拠点を検索できます。
8. 低消費電力カメラが向いている設置シーン・向いていないシーン
低消費電力カメラはすべての用途に万能なわけではありません。設置環境と目的に合わせて適切なカメラタイプを選ぶことが重要です。
向いている設置シーン
電源が取れない屋外の場所: 農地・畑・果樹園・山間部の現場・電源のない屋外駐車場など、配線工事が難しい場所での監視に最適です。
賃貸住宅・マンション: 工事不要で設置でき、退去時にも原状回復が容易です。玄関ドア周辺や共用廊下など、手軽に防犯対策を始めたい方に向いています。
仮設・短期間の設置: 工事現場・イベント会場・期間限定の資材置き場など、設置と撤去を繰り返す用途に向いています。
補助的な監視カメラとして: メインの有線カメラではカバーできない死角や、追加監視が必要になった場所に後から手軽に増設するのに適しています。
向いていない設置シーン
24時間の継続的・詳細な監視が必要な場所: 店舗のレジ周辺・入退室管理が必要な場所・常時録画が求められる用途では、タイムラグのある低消費電力カメラは不向きです。有線IPカメラ+NVRによる常時録画システムをおすすめします。
直射日光が長時間当たる南向きの設置面: バッテリーへの熱ダメージが懸念されます。
日照条件が悪い場所(ソーラー併用の場合): 北向きの壁・木陰・地下駐車場など日が当たらない場所では、ソーラーパネルが機能しないためバッテリー切れのリスクが高くなります。
9. これからの防犯カメラの主流に
低消費電力カメラは設置工事も簡単なことから、街中で見かけることが増えてきました。取り扱いには注意が必要ですし、設置する際は特徴やクセを踏まえて設置するようにしましょう。
AOV機能・AI検知・ソーラーパネル充電といった技術の進化により、低消費電力カメラは以前と比べてはるかに実用的なものになっています。タイムラグや検知精度の課題も少しずつ克服されており、今後さらに主流化していくカテゴリです。
一方で、常時録画が求められる用途や、証拠映像としての確実性が重要な現場では、有線IPカメラ+NVRによるシステムが依然として最適です。用途と設置環境を整理したうえで、最適なカメラタイプを選んでください。製品選びについてご不明な点があれば、お気軽にワイズセキュリティまでお問い合わせください。
営業時間:9時〜18時(不定休) TEL:050-3172-8889 お問い合わせ:https://wizsecurity.jp/contactus/ オンラインストア:https://wizsecurity.jp/shop/
※本記事の情報は2025年6月時点のものです。
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