親が施設に入った、相続で実家を引き継いだ、転勤で長期間住まない家がある——こうした事情で「今は誰も住んでいない家」を管理している方は、年々増えています。
総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年10月時点の全国の空き家数は約900万戸に達し、調査開始以来最多となりました。1993年の448万戸から30年で倍増し、空き家率も13.8%と過去最高を記録しています。特に「賃貸用・売却用・別荘を除いたその他の空き家」は385万戸にのぼり、実質的に管理が行き届いていない住宅が増え続けている状況です。
問題は、誰も住んでいない家が「狙われやすい」という点にあります。この記事では、空き家・遠方の実家に生じる防犯上のリスクと、離れた場所からできる管理の方法を解説します。
空き家に起きるリスクを整理する
「誰も住んでいないから、盗まれるものもない」と考えるのは危険です。空き家には、独自のリスクが複数存在します。
不法侵入・不法占拠は最も深刻なリスクのひとつです。人の気配がない建物は、侵入者にとって「発見されにくい作業環境」です。侵入者が住み着いてしまうケース、犯罪グループが拠点として利用するケース、違法行為の場として悪用されるケースが実際に報告されています。一度居座られると、退去させるために法的手続きが必要になり、時間と費用の負担が大きくなります。
建材・設備の盗難も見過ごせません。銅管・給湯器・エアコン室外機・アルミサッシなど、換金価値のある建材や設備が持ち去られる被害があります。空き家の場合、被害の発覚が数か月後になることも珍しくなく、その間に繰り返し被害を受けているケースもあります。
不法投棄も空き家の敷地でよく起きる問題です。人目につきにくい空き家の敷地は、家庭ゴミだけでなく粗大ゴミや産業廃棄物の投棄場所にされることがあります。所有者が処分費用を負担することになるケースが多く、金銭的な損失につながります。
放火・いたずらのリスクもあります。管理されていない空き家は放火の対象になりやすく、周囲に燃え広がった場合の責任問題にも発展しかねません。落書き・窓ガラスの破壊といった器物損壊も、繰り返されるケースがあります。
近隣トラブル・法的責任にも注意が必要です。庭木の越境・害虫害獣の発生・建物の老朽化による危険——これらは近隣から苦情の対象になります。2023年の空家等対策特別措置法の改正により、管理が不十分な「管理不全空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税負担が大幅に増える可能性があります。
引用元:https://sknowledge.jp/japans-9-million-vacant-houses-problem-causes-and-risks-examples-of-solutions-and-what-owners-should-do-now/(エスナレッジ「日本の空き家900万戸問題:原因とリスク、解決策」)
「空き家だとわかる状態」を作らない
空き家が狙われる最大の理由は、「誰も住んでいない」ことが外から見てわかるためです。この状態を少しでも軽減することが、リスクを下げる基本になります。
郵便物・チラシがたまっていないかを定期的に確認することが重要です。ポストからあふれたチラシは、長期不在の最もわかりやすいサインです。郵便物の転送手続きを行っておくとともに、投函されるチラシを定期的に処分する体制を整えておきましょう。
庭木・雑草の手入れも重要です。伸び放題の雑草や庭木は、外から見て「管理されていない家」であることを明確に示します。同時に、雑草が茂ることで敷地内に死角が生まれ、侵入者が身を隠せる環境になってしまいます。
照明の点灯による在宅感の演出も有効です。タイマー付きの照明を設置して、夜間の一定時間だけ室内の明かりが点くようにしておくと、外からは人が住んでいるように見えます。電気を止めてしまっている場合は難しいですが、電気契約を維持している空き家であれば検討する価値があります。
カーテンの管理にも配慮しましょう。カーテンが常に閉まりきっている、または全くない状態は、無人であることを示唆します。可能であれば、生活感のある状態を保つことが望ましいです。
物理的な防犯強化
空き家の防犯を強化するうえで、物理的な侵入対策は基本になります。
全ての施錠の確認と鍵の交換が最初のステップです。相続や引き継ぎで管理することになった家は、過去に誰が合鍵を持っているか把握できないケースがあります。管理を始めるタイミングで玄関の鍵を交換しておくことが安全です。窓・勝手口・裏口を含めて、全ての開口部の施錠状態を確認しましょう。
補助錠・面格子の設置も有効な対策です。特に1階の窓や、道路から見えにくい位置にある窓は、侵入の主要ルートになります。補助錠を追加することで、侵入に要する時間を増やすことができます。
シャッター・雨戸の活用は、物理的な侵入抑止として非常に効果的です。閉めきっていることで「無人であることが明らか」というデメリットはありますが、実際の侵入難易度を大きく上げる効果の方が勝ります。
敷地への進入経路の管理も重要です。門扉や柵に施錠できる仕組みを設け、簡単に敷地内に入れない状態を作ります。防犯砂利を敷いておけば、足音で侵入に気づける可能性が高まります。
遠隔での監視・管理をどう行うか
離れた場所から空き家を管理するうえで、最も有効なツールが防犯カメラです。
スマートフォン連携の防犯カメラを設置しておけば、遠方からでも建物や敷地の状況をリアルタイムで確認できます。モーション検知通知を設定しておくことで、敷地内に動きがあった際に即座に通知を受け取り、映像を確認することが可能になります。「今日ちょっと見に行けない」という状況でも、状態を把握できることが大きな安心につながります。
空き家で問題になりやすいのが電源とインターネット環境です。電気を止めている空き家では、通常のカメラは使用できません。この場合、ソーラー充電式・バッテリー式のカメラが選択肢になります。Wi-Fi環境がない場合は、SIMカードを内蔵して携帯回線で通信するタイプのカメラが有効です。
センサーライトも、ソーラー式のものを選べば電源工事なしで設置できます。夜間に人が近づくと点灯することで、周囲から気づかれやすくなり、犯行の抑止につながります。
定期的な現地確認も、可能であれば継続することが望ましいです。月に1回でも訪問し、建物の状態・郵便物・庭の状況を確認する習慣があると、問題の早期発見につながります。遠方で訪問が難しい場合は、自治体やNPO、民間の空き家管理サービスを利用する方法もあります。月額数千円程度で、定期巡回・通気・郵便物の確認などを代行してくれるサービスが各地で展開されています。
近隣との関係を維持しておく
空き家管理において、地域とのつながりは非常に大きな意味を持ちます。
近隣の方に「この家は自分が管理している」と伝え、連絡先を共有しておくことで、異変があった際に知らせてもらえる関係を作ることができます。不審者の出入り、庭木の越境、建物の破損など、遠方からでは気づけない問題を早期に把握できます。
また、近隣への配慮を示すことで、苦情やトラブルに発展する前に相談してもらえる関係を築けます。「連絡が取れない所有者」という状態が、近隣トラブルを深刻化させる最大の要因です。年に1〜2回でも挨拶や状況報告を行っておくことが、長期的な安心につながります。
まとめ
空き家・遠方の実家の管理は、「時々見に行けばいい」という意識では対応しきれない時代になっています。不法侵入・盗難・不法投棄・放火——リスクは多岐にわたり、いずれも発見が遅れるほど被害が拡大します。
鍵と施錠の確認、外観の手入れ、遠隔で状況を確認できる防犯カメラの設置、近隣との連絡体制——これらを整えることで、離れた場所からでも「守れる家」にすることができます。
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