防犯カメラの補助制度は、自治会や町内会といった地域団体を対象とするのが一般的です。事業者が使える制度は多くありません。
その点、堺市の「地域貢献事業所防犯カメラ設置事業補助金」は珍しい設計です。市内の企業等が、地域の犯罪防止を目的として設置する防犯カメラに対して、設置費用の一部を補助する制度になっています。個人事業主も対象に含まれます。
制度の名称に「地域貢献」とあるとおり、自社の敷地内だけを守るためのカメラではなく、道路など公共空間を撮影するカメラが対象です。この記事では、制度の内容と申請にあたっての注意点を整理します。
なお、内容や受付状況は変更される場合がありますので、実際に申請される際は必ず堺市の公式ページか担当課でご確認ください(本記事は2026年8月時点の情報です)。
どんな事業者が対象になるの?
対象となるのは、次のいずれかに加入している企業等です。個人事業主も含まれます。
堺防犯協議会事業所防犯部および特設防犯部、西堺事業場防犯協会、中堺事業場防犯協会、南堺事業場防犯協会、北堺事業場防犯協会、黒山事業所防犯協会——これらの団体への加入が前提となります。
つまり、市内の事業者であれば誰でも申請できるわけではなく、地域の防犯協会等に加入していることが要件ということです。加入していない場合は、まず所属先の確認から始める必要があります。
堺市のホームページには、この制度を活用して防犯カメラを設置した事業所の一覧が掲載されています。運送会社、工務店、病院、整骨院、幼稚園、こども園、薬局——業種は多岐にわたります。地域に根ざした事業者が幅広く活用していることがうかがえます。
いくら補助されるの?
補助率は設置費用の50%(1円未満切り捨て)で、補助限度額は1台につき10万円までです。
補助対象となる経費は、防犯カメラ・録画装置等の機器購入費、防犯カメラの設置に関する調査設計費、防犯カメラの設置工事費、その他表示板等の防犯カメラ設置関連費です。
一方、保守点検費、修繕費、電気料金等の維持管理費用は除かれます。設置後のランニングコストは事業者の負担になります。
もうひとつ注意したいのが、消費税および地方消費税は補助対象経費に含まれないという点です。見積額の税抜き分が計算の基礎になりますので、予算を組む際は留意してください。
申請は同一年度内に同一補助対象者につき1回限り、かつ補助対象となる防犯カメラは2台までです。ただし、複数の事業所を管理していて異なる実施場所で事業を行う場合は、実施場所ごとに1回と数えるとされています。
引用元:https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bohan/chiiki/jigyousyobouhannkkamera.html(堺市「堺市地域貢献事業所防犯カメラ設置事業補助金」)
「画像面積の2分の1以上」という要件
この制度で最も特徴的なのが、撮影範囲に関する要件です。
補助対象となるのは、道路等の不特定多数の者が利用する場所について、画像面積の2分の1以上を撮影する防犯カメラとされています。
つまり、映像の半分以上が公共空間でなければならないということです。自社の敷地が大半を占め、道路が端に少し映る程度では要件を満たしません。
この要件は、制度の目的を反映しています。あくまで地域の犯罪防止に貢献するカメラへの補助であり、自社の資産を守るための設備を補助するものではないという整理です。
駐車場は「道路等、不特定多数の者が利用する場所」に該当しないとも明記されています。自社の駐車場を映すカメラは対象外ということです。
また、複数台の設置申請の際、同じような画角の場合は補助対象とならない場合があるとされています。同じ場所を重複して撮影するのではなく、異なる範囲をカバーすることが求められます。
その他の主な要件
補助の要件として、次のような点が挙げられています。
堺市内に設置され堺市域を撮影するものであること。ただし、市外に設置される防犯カメラであっても、他市の補助制度の対象ではなく、堺市域を撮影しており、市民の生活安全上必要と認められるものは含まれるとされています。
犯罪の発生を抑制するため特定の場所に継続的に設置されるカメラであって、録画機能があるものであること。録画機能を有する防犯カメラを設置する場合に限り補助金が交付されます。
国および地方公共団体等の他の補助制度による交付を受けていないものであること。他の補助との重複はできません。
このほか、市が定める「堺市地域貢献事業所防犯カメラ設置補助基準」を満たす必要があります。申請前に必ず確認しておきましょう。
校区自治連合会の理解が必要
事業者向けの制度でありながら、地域との関係が要件に組み込まれている点も特徴的です。
設置場所当該地区の校区自治連合会の要望に基づくもの、または理解を得ているものに限るとされています。交付申請書には確認欄が設けられています。
これは、公共空間を撮影する以上、地域の理解が前提になるという考え方です。事業者が単独で判断して設置するのではなく、地域と対話したうえで進めることが求められています。
実務としては、設置を検討する段階で校区自治連合会に相談し、理解を得ておく必要があります。「この場所にカメラを設置したいと考えている」「撮影範囲はこの程度になる」——こうした説明を丁寧に行うことが、円滑な申請につながります。
設置場所の所有者等から、防犯カメラ設置の許可を得ることも必要です。自社の建物であっても、賃貸の場合は貸主の許可が要ります。
近隣への説明の進め方については、こちらの記事も参考になります。 → 防犯カメラを設置する前に、ご近所へ何を伝えるべきか|トラブルを避ける進め方
設置前に申請すること
交付申請および交付決定前に設置済みのカメラは補助対象外となります。
これは補助金制度に共通する原則ですが、改めて確認しておきましょう。「すでに設置してあるカメラの費用を後から申請する」ということはできません。
必ず、申請、交付決定、そして設置工事という順序を守ってください。
なお、道路交通法等の法令に基づく許可が必要な場合があるともされています。道路上や道路に面した場所への設置では、別途の手続きが必要になる可能性があります。
管理運用規定の作成が必要
申請書類のひとつとして、防犯カメラ管理運用規定の作成が求められます。
堺市では作成例が公開されていますので、これを参考に自社の状況に合わせて作成することができます。あわせて、防犯カメラ管理運用責任者届出書の提出も必要です。
規定に盛り込むべき内容としては、管理責任者の選任、映像の閲覧ルール、保存期間、第三者への提供の手続き——といった事項が挙げられます。
堺市では、外部提供に際してのチェックリストや、外部提供データ管理表の作成例も公開されています。警察等から映像の提供を求められた際の手続きを整えておくことは、実務上も重要です。
設置看板の作成例も公開されています。「防犯カメラ作動中」といった表示は、プライバシーへの配慮であると同時に、抑止効果を高める役割も果たします。
申請に必要な書類
交付申請時に必要な書類は、次のとおりです。
補助金交付申請書、役員情報届出書(法人でない場合は不要)、収支予算書、防犯カメラ設置箇所位置図、撮影範囲を記した平面図、防犯カメラ管理運用規定、防犯カメラ管理運用責任者届出書、業者から徴した経費見積書の写し、設置する防犯カメラの概要がわかる図面・カタログ等の資料、設置場所の所有者等の権利者から許可が得られていることを証する書類——などです。
撮影範囲を記した平面図は、「画像面積の2分の1以上」という要件を満たしているかを確認するための重要な書類です。施工業者に相談しながら作成するとよいでしょう。
実績報告時には、補助金実績報告書、収支決算書、設置後の現況写真、撮影された画像(モニターの写真等)、支払領収書等の写しが必要です。実際にどのような映像が撮れているかを提出する点は、要件の確認という意味で理にかなっています。
電子申請も可能
堺市では、電子申請システムからの申請も受け付けています。事前に利用者登録が必要ですが、窓口へ出向く手間を省けます。
申請および問い合わせ先は、市民人権局 市民生活部 市民協働課 地域安全係です。堺市役所高層館3階に窓口があります。
堺市の案内では「申請にあたっては、まずはお気軽に下記担当課までお問合せください」とされています。要件の確認や書類の相談は、早い段階で行っておくとよいでしょう。
事業者にとってのメリット
この制度を活用することには、複数の意味があります。
自社周辺の防犯という直接的な効果があります。事業所周辺の道路を撮影するカメラは、自社への侵入や車両へのいたずらといった被害の抑止にもつながります。
地域貢献としての位置づけも明確です。制度名にあるとおり、地域の安全に寄与する取り組みとして評価されます。堺市のホームページには協力事業所の一覧が掲載されており、地域における企業の姿勢を示す機会にもなります。
トラブル時の記録としても機能します。事業所周辺で事故やトラブルが発生した際、映像記録があることは事実確認の助けになります。
一方で、公共空間を撮影する責任も伴います。通行人が撮影されることになりますので、適切な管理運用が求められます。管理運用規定の作成は、その責任を果たすための仕組みです。
店舗や事業所の防犯対策全般については、こちらの記事も参考になります。 → お店を守るために知っておきたい防犯対策|万引き・空き巣・不審者への備え方
まとめ
堺市の地域貢献事業所防犯カメラ設置事業補助金は、市内の企業等を対象とする珍しい制度です。補助率50%、1台につき10万円まで、年度内に1回・2台までという内容になっています。
特徴的なのは、「画像面積の2分の1以上が公共空間」という撮影範囲の要件です。自社の敷地を守るためのカメラではなく、地域の防犯に貢献するカメラへの補助という位置づけが明確に示されています。
また、校区自治連合会の理解を得ることが要件とされている点も、地域との関係を重視した設計といえます。設置を検討する段階から、地域との対話を進めておくことをおすすめします。
まずは担当課に問い合わせて、要件を満たしているかを確認するところから始めてみてください。
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