防犯カメラの補助制度には、「1団体につき2台まで」「年度内1回限り」といった台数・回数の制限があるのが一般的です。
その点、奈良市の制度は少し違います。限度額の範囲内であれば、同一年度内に複数回申請できるという設計になっています。1団体あたり30万円という枠を、分割して使えるということです。
さらに、賃借(リース)に要する経費も対象とされている点も特徴的です。この記事では、制度の内容と、その柔軟性をどう活かすかを整理します。
なお、内容や受付期間は変更される場合がありますので、実際に申請される際は必ず奈良市の公式ページか危機管理課でご確認ください(本記事は2026年8月時点の情報です)。
どんな団体が対象になるの?
対象となるのは、奈良市内の自治会その他これに類する団体です。
「その他これに類する団体」という表現は幅を持たせたもので、自治会という名称でなくても、地域住民で構成される団体であれば対象になり得ると考えられます。判断に迷う場合は、危機管理課に確認してみるとよいでしょう。
いくら補助されるの?
補助金の額は、補助対象経費の2分の1で、1団体につき30万円が限度額です(1,000円未満の端数は切り捨て)。
補助対象となる経費は、次のとおりです。カメラ、録画装置等の防犯カメラを構成する機器の購入費用。設置工事費用。賃借に要する経費(賃借費については設置初年度に限る)。看板等の設置に要する経費。
一方、防犯カメラの保守費用、修理費用および電気料金等の維持管理費は補助の対象外とされています。設置後のランニングコストは団体の負担になります。
引用元:https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/2/266646.html(奈良市「自治会等への防犯カメラ設置補助金交付事業についてのご案内」)
「複数回申請可能」とはどういうこと?
この制度で最も特徴的なのが、申請回数の考え方です。
奈良市の案内では、補助金の交付について「同一の団体につき、当該年度において、限度額の範囲内であれば複数回申請可能」と明記されています。
具体例として、次のような説明がなされています。1回目の申請に対する補助金交付額が20万円の場合、2回目の申請に対する補助金交付額は、10万円を限度として交付可能——というものです。
つまり、30万円という枠を一度に使い切る必要がないということです。
この柔軟性には実務的な意味があります。
段階的に設置できるという利点があります。まず1台設置して効果を確認し、その後に追加するという進め方が可能です。一度に複数台を設置するより、地域内の合意も得やすいかもしれません。
年度途中の状況変化に対応できるという面もあります。「この場所で不審者情報が出た」といった事態が年度途中に生じた場合、残りの枠を使って追加設置できます。
予算の都合に合わせられるという点も現実的です。自治会の会計状況によっては、一度に大きな支出をするのが難しいこともあります。分割することで、負担を平準化できます。
賃借(リース)も対象になる
もうひとつの特徴が、賃借に要する経費が補助対象に含まれている点です。ただし、設置初年度に限るという条件があります。
リースという選択肢には、いくつかの利点があります。
初期費用を抑えられることが最大のメリットです。まとまった支出が難しい団体にとっては、月額での支払いの方が予算に組み込みやすくなります。
保守が含まれる契約もある点も利点です。故障時の対応や定期点検が契約に含まれていれば、管理の負担が軽くなります。役員が交代する組織では、専門的な保守を外部に任せられることは大きな意味を持ちます。
一方、注意点もあります。補助が初年度のみですので、2年目以降のリース料は自治会の負担になります。長期的な総額を試算したうえで、購入と比較検討することをおすすめします。
なお、鹿児島市のようにリース契約を明確に補助対象外としている自治体もあります。この扱いは制度によって分かれますので、他の地域の情報をそのまま当てはめないよう注意してください。
申込期間と募集件数
令和8年度の申込期間は、6月1日から12月25日までとされています。比較的長い期間が設定されていますが、注意点があります。
申込期間内であっても、予算額に達し次第終了します。
そして、**募集件数は15件程度(先着順)**とされています。市全体でこの件数ですので、決して多いとは言えません。
「12月まで時間がある」と考えていると、その間に枠が埋まる可能性があります。設置を検討している団体は、早めに動くことをおすすめします。
申請前に警察へ相談する
奈良市の案内では、事前に管轄の警察署へ防犯カメラの設置場所等について相談するよう求められています。
これは形式的な手続きではなく、実務的に意味のある要件です。
警察は地域の犯罪発生状況を把握しています。どの通りで何が起きているか、どの時間帯に多いか——こうした情報は、自治会が独自に集められるものではありません。
また、「どういう映像が捜査に役立つか」という視点も持っています。人物の顔が識別できる高さと角度、車のナンバーが読み取れる位置——実際に映像を使う立場からの助言は、設置の実効性を大きく高めます。
設置角度と画質の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 防犯カメラを設置したのに「証拠にならなかった」——よくある理由と対策を解説
設置前の申請が必須
奈良市の案内では、次の点が繰り返し強調されています。
防犯カメラを設置される前に申請していただく必要があります。申請前に設置されたものについては対象外となります。
これは補助金制度に共通する原則ですが、改めて確認しておきましょう。「すでに設置してあるカメラの費用を後から申請する」ということはできません。
また、「奈良市防犯カメラ設置補助について~申請の手引き~」を必ず確認のうえ申請すること、申請に必要な書類が不十分の場合は受付できないことも明記されています。
必要書類がすべて整った状態で申請する必要がありますので、手引きを読み込んだうえで準備を進めてください。
申請に必要な様式
奈良市では、各種様式が公開されています。主なものを挙げておきます。
補助金交付申請書(第1号様式)——申請の中心となる書類です。
市税納付状況調査書兼暴力団等の排除及び防犯カメラ設置場所照会に関する同意書(第2号様式)——市税の納付状況や設置場所についての照会に同意する書類です。
事業変更・中止承認申請書(第4号様式)——計画に変更が生じた場合に使用します。
事業完了報告書(第5号様式)——設置完了後に提出します。
補助金請求書(第7号様式)——補助金を請求する際の書類です。
財産処分承認申請書(第9号様式)——補助金で取得した財産を処分する際に必要です。
相手方登録申請書——振込先の登録に使用します。記載例も公開されています。
このほか、予約フォームが用意されており、申請の相談を予約できるようになっています。
申請書類の準備については、こちらの記事も参考になります。 → 防犯カメラ補助金の申請書類、何をどう揃える?|自治会役員のための準備ガイド
ガイドラインの確認を
奈良市では、**「自治会等が設置する防犯カメラ設置及び運用に関する奈良市ガイドライン」**が公開されています。
このガイドラインには、設置・運用にあたって守るべきルールがまとめられています。プライバシーへの配慮、管理責任者の選任、映像の取り扱い、保存期間——こうした事項が定められているのが一般的です。
申請前に一読しておくことで、必要な準備が見えてきます。特に、映像の管理規程を作成する際の指針になります。
30万円の枠をどう配分する?
複数回申請が可能である以上、枠の使い方には工夫の余地があります。
まず優先度の高い場所から設置するという進め方が基本です。警察に相談して得た情報をもとに、最も必要性の高い場所を選びます。
効果を確認してから追加するという考え方もあります。1台設置してみて、実際にどのような映像が撮れるか、地域の反応はどうかを確認したうえで、次の設置を判断できます。
設置費用の内訳を把握することも大切です。ポールを建てる場合と既存の構造物に取り付ける場合では、費用が大きく変わります。既存の電柱や壁面を活用できれば、同じ予算でより多くの台数を設置できる可能性があります。
残枠を意識することも忘れないでください。1回目で20万円を使えば、残りは10万円です。2回目の設置内容は、その範囲で計画する必要があります。
まとめ
奈良市の防犯カメラ設置補助金は、補助率2分の1・1団体につき30万円を限度とする制度です。同一年度内に複数回申請できる点、賃借(リース)も対象となる点が、他の自治体にはない柔軟性といえます。
一方で、募集件数は15件程度・先着順とされており、予算に達し次第終了します。申込期間は12月まで設定されていますが、早めに動く方が確実です。
そして、申請前に管轄の警察署へ相談することが求められています。設置場所の選定において、この相談は大きな助けになるはずです。
まずは手引きを確認し、警察への相談から始めてみてください。
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