身内に不幸があったとき、防犯のことまで考える余裕はないと思います。
しかし現実として、葬儀の日は家が無防備になりやすいという事実があります。通夜と告別式で二日続けて家を空け、その情報は訃報として広く知られている——という状況が生まれるからです。
この記事では、葬儀に伴う防犯上のリスクと、慌ただしいなかでもできる備えを整理します。事前に知っておくことで、いざというときの負担を減らせるはずです。
なぜ葬儀のときが危ないのか
いくつかの要因が重なります。
不在の時間帯が特定されやすい——通夜は夕方から夜、告別式は午前中というのが一般的です。開始時刻が訃報や案内で知らされていれば、いつ家が空くかが明らかになります。
訃報が広く伝わる——新聞のお悔やみ欄、町内の回覧板、勤務先への連絡——訃報は多くの人に共有されます。悪意ある人物がその情報に触れる可能性もあります。
現金や貴重品が動く——香典、お布施、葬儀費用——この時期は現金を扱う機会が増えます。自宅に一時的に現金が置かれることもあります。
人の出入りが多い——弔問客、親族、葬儀社のスタッフ——普段より多くの人が家に出入りします。見慣れない人がいても不自然に見えません。
判断力が落ちている——精神的に大きな負担がかかっている時期です。普段なら気づくことを見落としたり、冷静な判断ができなかったりします。
出かける前にできること
限られた時間のなかで、優先度の高いものから挙げます。
施錠の確認——玄関、勝手口、すべての窓。慌ただしいときほど、確認が抜けます。誰か一人が担当を決めて確認する方が確実です。
現金・貴重品の持ち出し——通帳、印鑑、現金、貴金属。可能な範囲で持ち出すか、金庫に入れておきます。
シャッター・雨戸を閉める——物理的な侵入抑止として有効です。
照明をつけておく——夜間の通夜に出かける場合、室内の照明を点けたままにしておくという方法があります。電気代はかかりますが、不在を悟らせにくくなります。
近隣に伝える——親しい方がいれば、「今日は葬儀で留守にします」と伝えておくことで、注意を向けてもらえます。
カメラの動作確認——設置している場合、映像が正常に記録されているかを確認しておきましょう。
長期不在時の対策については、こちらの記事も参考になります。 → 帰省・長期不在前に必ずやっておきたい防犯対策|空き巣に狙われない家づくり
家族で役割を決める
すべてを一人で担うのは現実的ではありません。
留守番を立てる——可能であれば、誰か一人が自宅に残るという選択があります。全員が参列しなければならないわけではありません。特に、遠方から親族が来ている場合、交代で対応するという方法もあります。
戸締り担当を決める——「最後に出る人が確認する」ではなく、「〇〇さんが担当する」と明確にしておく方が漏れがありません。
貴重品の管理者を決める——香典を誰が管理するか。これも事前に決めておくとトラブルを防げます。
連絡先を共有する——何かあったときに誰に連絡するか。葬儀の最中は電話に出られないこともあるため、複数の連絡先を用意しておくとよいでしょう。
香典の管理
現金を扱う場面での注意点です。
受付の体制——香典の受付は、できれば複数人で行います。金額の確認と記録を分担することで、後のトラブルを防げます。
保管場所——受け取った香典を、会場のどこに置いておくか。人目のない控室に放置するのは避けたいところです。
持ち帰りのタイミング——葬儀が終わってから自宅に運ぶまで、誰が管理するかを決めておきます。
自宅での保管——葬儀後、まとまった現金が自宅にある状態が続くことがあります。可能な限り早く金融機関に預けることをおすすめします。
葬儀社によっては、貴重品の保管について相談に応じてくれる場合もあります。心配な場合は聞いてみるとよいでしょう。
葬儀後にも注意が必要
実は、葬儀が終わってからのリスクもあります。
一人暮らしになった高齢者——配偶者を亡くした方が一人暮らしになるケースです。この情報が地域に知られることで、詐欺や訪問販売の標的になる可能性があります。
空き家になる場合——故人が一人で住んでいた家は、葬儀後に空き家になります。相続の手続きが済むまで、管理が曖昧になりがちです。
相続を装った詐欺——「相続手続きの代行」「遺品整理」といった名目での勧誘が増えることがあります。訃報を見て接触してくるケースもあります。
遺品整理業者とのトラブル——高額請求、貴重品の持ち去り——こうした被害も報告されています。複数社から見積もりを取ることをおすすめします。
高齢者を狙う手口については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 高齢の親を詐欺・悪質訪問販売から守る|手口の実態と家族でできる対策
空き家になった実家の管理
故人が住んでいた家が空き家になる場合、早めの対応が必要です。
鍵の管理——誰が鍵を持っているか把握します。介護サービスの事業者、近隣の方、親族——複数に渡っていることもあります。相続が確定するまでの管理者を決めておきましょう。
郵便物の転送——郵便受けにたまった郵便物は、空き家であることを示すサインになります。転送手続きを行うか、定期的に回収する体制を作ります。
定期的な訪問——月に一度でも訪れて、施錠の確認、換気、庭の状況確認を行います。遠方で難しい場合は、空き家管理サービスの利用も選択肢です。
電気・水道の扱い——完全に止めてしまうと、夜間に照明を点けることもできなくなります。管理の頻度に応じて判断してください。
空き家の防犯については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 空き家・遠方の実家をどう守るか|放置がまねくリスクと遠隔管理の方法
訃報の公開範囲を考える
近年は、家族葬を選ぶ方が増えています。
訃報を限定的に伝えるという選択は、防犯の観点からも一定の意味があります。不特定多数に知らせないことで、不在の情報が広がりにくくなります。
新聞のお悔やみ欄——地域によっては、住所まで掲載されることがあります。掲載の可否は選べる場合が多いので、葬儀社に確認してみてください。
SNSでの報告——訃報や葬儀の様子をSNSに投稿することは、避けた方が無難です。日時と場所が明らかになれば、その時間帯の不在が特定されます。
もちろん、多くの方に見送っていただきたいという気持ちもあるでしょう。防犯だけで判断すべきことではありません。ただ、こうした側面もあるということは知っておいて損はないと思います。
事前にできる備え
いざというときに慌てないために、平常時にできることもあります。
貴重品の保管場所を決めておく——通帳、印鑑、権利書——どこに何があるかを家族で共有しておけば、緊急時にも対応できます。
金庫の設置——持ち出せない貴重品を保管する場所があると安心です。
防犯設備の整備——玄関のカメラ、センサーライト——普段から設置してあれば、いざというときに特別な準備をしなくて済みます。
近隣との関係——日頃から挨拶を交わす関係があれば、「留守にします」の一言が言いやすくなります。
まとめ
葬儀の日は、不在の時間が特定されやすく、現金の動きがあり、人の出入りも多い——防犯上は注意が必要な状況です。
とはいえ、そのときに多くのことはできません。施錠の確認、貴重品の持ち出し、家族での役割分担——この程度でも意味があります。
そして、葬儀後にも注意が必要です。一人暮らしになる方への配慮、空き家となる家の管理、相続を装った勧誘への警戒——こうした点も頭に入れておいてください。
平常時に防犯設備を整えておけば、いざというときの負担は確実に減ります。
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