「高層階だから、空き巣の心配はない」——マンションの上の階に住む方から、こうした話を聞くことがあります。
確かに、地上から直接侵入されるリスクは低くなります。しかし、別の経路と別のリスクが存在します。
この記事では、高層階ならではの防犯について整理します。
侵入経路は存在する
まず、事実を確認しておきましょう。
共用廊下からの窓——多くのマンションで、玄関側の窓は共用廊下に面しています。ここは誰でも通れる場所です。実質的に、1階と同じ条件と考えるべき場所です。
屋上からの降下——最上階付近では、屋上から降りてくる手口が報告されています。ロープを使えば、数階分は移動できます。
隣戸のベランダから——ベランダの仕切り板は、非常時の避難経路として簡単に破れる構造です。隣の住戸から侵入されるケースがあります。
上下階のベランダ——階段状の構造や、配管を伝う——建物の形状によっては、移動が可能な場合があります。
エレベーター・階段——建物内に入られてしまえば、階数は関係ありません。
オートロックの限界
多くの方が安心材料と考える設備です。
共連れ——住人が解錠した際に、後ろから一緒に入る手口です。オートロックの最も一般的な突破方法です。
宅配業者を装う——「〇〇号室の宅配です」と伝えて解錠してもらう方法があります。
業者と一緒に入る——工事や清掃で出入りする業者がいれば、その流れで入れます。
エントランスの死角——常に人が見ているわけではありません。
オートロック自体は有効——ないよりは確実に良い設備です。ただし、「あるから安心」と考えるべきではありません。
玄関の対策
高層階でも、玄関は玄関です。
施錠の徹底——「上の階だから」と油断しないでください。建物内に入られれば、階数は関係ありません。
補助錠の追加——ダブルロック化により、解錠に必要な時間が増えます。
サムターン対策——ドアの隙間や郵便受けから工具を入れる手口には、内側の対策が必要です。
ドアスコープカバー——外から覗かれることを防ぎます。
カメラ付きインターホン——ドアを開ける前に相手を確認できます。
ドアチェーン——応対時の距離を確保できます。
玄関ドアの手口については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 玄関ドアはどう破られるのか|手口を知って対策を選ぶ
共用廊下側の窓
見落とされやすい場所です。
誰でも近づける——共用廊下は、建物内に入れる人なら誰でも通れます。
面格子の確認——設置されているか、しっかり固定されているか。外側からネジで外せる構造では、効果が薄れます。
すりガラス——中が見えないことと、割られにくいことは別です。
補助錠の設置——窓にも鍵を追加できます。
開けたまま出かけない——換気のために開けることがあれば、施錠を確認する習慣が必要です。
カーテンの活用——室内の様子が見えない状態にしておきましょう。
ベランダの対策
高層階でも油断できません。
仕切り板の存在——隣戸との間の板は、蹴破れる構造です。避難のために必要な設備ですが、防犯上は弱点になります。
掃き出し窓の施錠——ベランダに面した大きな窓は、侵入経路になります。補助錠の追加を検討してください。
物を置きすぎない——ベランダに置いたものが、隣戸や上下階への足場になることがあります。
洗濯物——家族構成が推測される情報です。特に単身女性の場合、配慮が必要です。
避難経路の確保——防犯を重視するあまり、緊急時の避難を妨げないよう注意してください。
ベランダの防犯については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → ベランダ・バルコニーの防犯|「2階だから安全」という思い込みを見直す
最上階特有のリスク
屋上に近いことによる問題です。
屋上への出入り——管理されているか確認してみてください。施錠されていない建物もあります。
屋上からの降下——数階分であれば、ロープを使って移動できます。
設備点検の出入り——業者が屋上に上がる際、その経路が把握されることがあります。
眺望の良さと引き換えに——最上階は人気がありますが、この点は考慮しておく価値があります。
管理組合への確認——屋上の管理状況について、理事会や管理会社に確認してみてください。
在宅・不在が読まれる
高層階でも、外から観察できる要素があります。
カーテンの動き——開閉の状態から、生活パターンが推測できます。
夜間の照明——点いているか消えているか。外からよく見えます。
ベランダの洗濯物——干されているかどうかで、在宅が判断できます。
共用廊下側の様子——郵便受け、玄関前の状態——建物内に入れる人には見えます。
エレベーターでの遭遇——同じ時間帯に見かければ、生活パターンが把握されます。
高層階ならではの利点
一方で、有利な点もあります。
逃走が難しい——侵入者にとって、犯行後の逃走経路が限られます。エレベーターや階段を使わざるを得ません。
時間がかかる——建物内を移動する時間が、リスクになります。
目撃される可能性——住人と遭遇する機会が多くなります。
カメラの存在——エントランスやエレベーターにカメラがある建物では、記録が残ります。
つまり、狙われにくい面もある——リスクがゼロではないという前提で、過度に不安になる必要はありません。
カメラの設置
集合住宅ならではの制約があります。
共用部への設置は不可——個人の判断では設置できません。管理組合の決定が必要です。
玄関ドアへの設置——ドアに取り付けるタイプのカメラがあります。ただし、管理規約で制限されている場合があります。
室内から窓越し——ベランダ側を映す場合、室内から撮影するという方法があります。ただし、夜間は反射で使い物にならないことがあります。
撮影範囲への配慮——共用廊下や隣戸が映り込む設置は、トラブルの原因になります。
管理規約の確認——設置前に必ず確認してください。
管理組合での導入については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → マンションに防犯カメラを導入したい|管理組合で決めるべきことと進め方
管理体制を確認する
建物全体の防犯です。
エントランスのカメラ——設置されているか、実際に録画されているか。
管理人の常駐——日中いるだけでも、抑止効果があります。
共用部の清掃状態——管理が行き届いているかは、防犯意識の反映でもあります。
掲示板の情報——不審者情報や注意喚起が掲示されることがあります。
管理組合への要望——問題があれば、理事会で議題にすることができます。
災害時の視点
高層階特有の課題です。
停電時のエレベーター——階段での移動が必要になります。
避難の困難さ——災害時、上階からの避難には時間がかかります。
在宅避難という選択——建物が無事であれば、自宅にとどまる判断もあります。備蓄が重要になります。
防犯設備の停止——停電時、オートロックが解錠される設定になっている建物もあります。
停電時の対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 停電したとき、あなたの防犯設備は動きますか?電源が切れたときの備えを考える
まとめ
高層階は、地上からの直接侵入というリスクは低くなります。しかし、共用廊下からの窓、屋上からの降下、隣戸のベランダ——別の経路が存在します。
そして、オートロックは共連れで突破されることがあります。「あるから安心」と考えるべきではありません。
対策としては、玄関の補助錠、共用廊下側の窓の施錠、ベランダの掃き出し窓——低層階と同じ基本を押さえることが有効です。
一方で、侵入者にとって逃走が難しいという利点もあります。過度に不安になる必要はありませんが、「高層階だから大丈夫」という思い込みは見直してみてください。
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