「うちは普通の家だから、強盗の標的にはならない」——かつてはそう言えたかもしれません。しかし、2024年以降に相次いだ「闇バイト型強盗」の被害は、富裕層や大きな家に限りません。住宅地の一般家庭、マンションの一室、一人暮らしの高齢者宅——ターゲットは広範囲に及んでいます。
法務省が公表した犯罪白書によると、2023年の強盗認知件数は1,361件と前年比213件増加しており、増加傾向は2年連続です。SNSを通じて匿名で実行役を集め、指示役が遠隔から犯行を指示する「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による手口は、従来の強盗とは異なる性質を持ちます。実行犯が素人に近く、リスク管理が甘い分、手口が粗暴になる傾向があり、被害者が抵抗した際に暴力が振るわれるケースも報告されています。
この記事では、闇バイト型強盗の手口と、一般家庭が今すぐできる防犯対策を整理します。
闇バイト型強盗とは何か
闇バイトとは、SNSや掲示板で「高収入・即日払い・簡単な仕事」などと募集し、応募者に詐欺・強盗・特殊詐欺などの犯罪を実行させる仕組みです。指示役は匿名で安全な場所に潜伏し、実行役だけがリスクにさらされます。
応募者は最初、仕事の内容を告げられません。応募後に個人情報を送信させられ、その情報を「脅し」の材料として使われることで抜けられない状況に追い込まれます。つまり、被害者(強盗に入られた家)だけでなく、加害者側の実行犯も被害者という側面があります。
この仕組みが拡散したことで、「強盗は特定の組織の専門犯罪者がやるもの」という前提が崩れました。前科のない一般人や未成年が実行犯になるケースが増え、犯行の計画性や熟練度が低い分、予測が難しく、暴力性が高まる傾向があります。
警察庁の調査によれば、闇バイトに関与して逮捕された人のうち約半数がSNSを通じて応募していたことが確認されており、2024年には千葉・神奈川・埼玉の各県警が合同捜査本部を設置するなど、広域対応が急務となっています。
引用元:https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02253/(nippon.com「犯罪白書:23年の刑法犯認知件数、2年連続増加 強盗事件1300件超発生」)
闇バイト型強盗が狙う家の特徴
闇バイト型強盗は、指示役が事前に下見情報や個人情報をもとに標的を選定するとされています。どのような家が狙われやすいか、実際に報告された事例をもとに確認しておきましょう。
SNSや口コミから特定された家庭が標的になるケースがあります。高額な買い物・旅行・高級品の購入などを頻繁にSNSに投稿している家庭は、「現金や貴重品がある」と判断されるリスクがあります。また、個人情報が流出・売買された結果、氏名・住所・資産情報がリスト化されて犯行グループに渡るケースも確認されています。
一人暮らしの高齢者・少人数の世帯は、抵抗されにくいとみなされるリスクがあります。特殊詐欺の延長で「お金を持っている高齢者」をターゲットにした強盗への移行も報告されており、電話でだまして「現金を預かりに行く」と称して訪問する「アポ電強盗」も問題になっています。
防犯設備が見当たらない家は、下見の段階で「侵入しやすい」と判断されます。防犯カメラがない、センサーライトがない、オートロックでない——こうした環境は、犯行のリスクが低い家として選ばれやすくなります。
玄関からの侵入を防ぐ対策
闇バイト型強盗の多くは、玄関ドアを突破して侵入します。「配達業者を装って玄関を開けさせる」「ドアが開いた瞬間に押し入る」という手口が多く報告されています。
ドアを開ける前に必ず確認する習慣が最重要です。インターホンで来訪者の顔と用件を確認し、見知らぬ相手にはドアを開けないことが基本です。カメラ付きインターホンが設置されていれば、室内から映像を確認したうえで対応できます。
ドアチェーンの活用も有効です。「配達です」「点検です」という口実で来た人物に対しても、必ずドアチェーンをかけたまま対応する習慣をつけましょう。チェーンをかけた状態でドアを少し開け、相手の身分・用件を確認することが大切です。チェーンを解除して全開にする前に「来訪の事実を確認できるか」を判断する一拍が、侵入を防ぐ重要な間になります。
宅配の事前確認も対策になります。注文した覚えのない荷物の配達連絡が来た場合は、通販業者に直接問い合わせて確認を取るか、対面受け取りを避けて宅配ボックスや配達コンビニ受け取りを活用する方法が安全です。「アポ電」と呼ばれる事前電話で在宅確認をする手口もあるため、見知らぬ番号からの電話に不用意に在宅を知らせないことも重要です。
防犯カメラ・センサーライトで「狙いにくい家」を作る
闇バイト型強盗を含む侵入犯罪全般において、「防犯設備が整っている家は避ける」という傾向があります。犯行前に下見を行い、侵入のリスクと手間を計算するからです。
防犯カメラの設置と告知は、最も強力な抑止手段のひとつです。玄関・勝手口・駐車スペースをカバーするカメラを設置し、「防犯カメラ録画中」のステッカーを目立つ場所に掲示することで、「映像が残る」というプレッシャーを与えます。
スマートフォンと連携するネットワークカメラなら、来訪者が近づいた際にモーション通知が届き、外出中でも玄関前の映像をリアルタイムで確認できます。「誰かが近づいた」という情報を即座に把握できることは、在宅中の安心感と、不在中の記録という両面で機能します。
センサーライトは夜間の下見・犯行準備の段階で機能します。人が近づくと自動点灯するライトは、「気づかれるかもしれない」という心理的プレッシャーを与え、特に犯行に慣れていない闇バイト実行犯には有効な抑止力になります。
在宅中の「もしも」に備える
防犯設備を整えることに加えて、万が一侵入者が現れた場合の行動を事前に考えておくことも重要です。
最も大切なのは「現金や貴重品より命を優先する」という判断です。強盗犯が家に侵入した場合、抵抗することは暴力被害につながる可能性があります。可能であれば別室に逃げて110番通報する、叫ぶ・大声を出して助けを求めるなど、被害を最小化する行動を優先してください。
日頃から家族間で「不審な来訪者が来たらどうするか」「在宅時に侵入された場合にどう動くか」を話し合っておくことが大切です。緊急時に慌てずに動けるかどうかは、事前の準備に大きく依存します。
貴重品・現金の分散管理も対策のひとつです。現金を自宅に大量に保管する習慣は避け、必要最低限の金額に抑えることが被害軽減につながります。貴重品は金庫への保管を検討し、強盗に遭っても「取られる金額を減らす」備えをしておくことが現実的な対策です。
個人情報の管理を見直す
闇バイト型強盗の標的選定に個人情報が使われている実態を踏まえ、自分や家族の個人情報がどこに出ているかを見直すことも重要な対策です。
SNSへの投稿内容を改めて確認してみましょう。高額商品の購入、高級レストランでの食事、旅行の報告——こうした投稿は「資産がある」「今日は外出中」という情報を不特定多数に伝えることになります。公開範囲の設定を見直し、フォロワー限定にするか、投稿のタイミングを帰宅後にずらすといった工夫が有効です。
名簿・リストの流出リスクにも注意が必要です。過去に入会した通販サービスや懸賞応募の情報が、悪意ある業者を通じて流通するケースがあります。使っていないサービスの会員情報は退会・削除しておくことが、長期的な個人情報管理の観点から重要です。
まとめ
闇バイト型強盗は「自分には関係ない」と思いにくい時代になっています。普通の住宅地で、普通の家庭が被害に遭う事例が各地で報告されています。完全に防ぐことはできなくても、「狙いにくい家」にすることで犯行の対象から外れる可能性を高めることができます。
玄関の対応習慣・防犯カメラとセンサーライトの設置・個人情報の管理——この3つを今日から意識してみてください。
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