防犯カメラ、センサーライト、オートロック、電気錠——現代の防犯設備の多くは、電気で動いています。裏を返せば、電気が止まればこれらの設備は機能を失うということです。
台風による停電、地震による送電網の被害、落雷、そして電力設備の故障——停電は決して珍しい事態ではありません。2018年の北海道胆振東部地震では、道内のほぼ全域が停電するブラックアウトが発生しました。台風シーズンには毎年、数万〜数十万戸規模の停電が各地で発生しています。
「防犯カメラを設置しているから安心」と思っていても、停電時にはただの飾りになっているかもしれません。この記事では、停電が防犯設備に与える影響と、電源が切れても機能を維持するための備えについて解説します。
停電で止まるもの、止まらないもの
まず、停電時に何が使えなくなるかを整理しておきましょう。
**通常の防犯カメラ(AC電源接続型)**は、停電と同時に停止します。録画も遠隔監視も、一切機能しません。これは有線カメラでもWi-Fiカメラでも同じで、電源が絶たれれば動作しません。
**録画機(NVR・DVR)**も同様に停止します。カメラ側が動いていても、録画機が止まっていれば映像は記録されません。また、突然の電源断はハードディスクに負荷をかけ、故障の原因になることもあります。
Wi-Fiルーターが停止すると、ネットワークカメラの遠隔監視ができなくなります。カメラ自体がバッテリーで動いていても、通信経路が絶たれればスマートフォンへの通知は届きません。
電気錠・オートロックは、製品によって挙動が異なります。停電時に自動解錠される「フェイルセーフ型」と、施錠状態を維持する「フェイルセキュア型」があります。マンションのエントランスなどでは、避難のために解錠される設定になっている場合があり、この間はセキュリティが低下します。自宅の電気錠がどちらのタイプかを把握しておくことは重要です。
センサーライトも、コンセント式のものは停止します。ソーラー充電式・電池式であれば、停電中も点灯します。
一方、物理的な鍵・補助錠・防犯フィルム・防犯砂利は、電気に依存しないため停電中も機能し続けます。電源不要の対策が、非常時の最後の砦になるということです。
停電中に防犯リスクが高まる理由
停電時は、通常より犯罪リスクが高まる状況が生まれます。
街全体が暗くなることが最大の要因です。街灯・住宅の照明・店舗の看板——これらがすべて消えると、夜間の視界は極端に悪化します。人の目による見守りが機能しなくなり、不審者が近づいても気づかれにくくなります。
警察・警備会社の対応が手薄になる可能性もあります。大規模停電時には、信号機の停止による交通整理、救助要請への対応などに人員が割かれます。通常の巡回パトロールは相対的に手薄になります。
住民が避難するケースでは、地域全体が無人化します。災害に伴う停電の場合、この状況は特に起こりやすくなります。
警報装置が作動しないことで、侵入されても気づけない状態が生まれます。電気式のセンサーやアラームに依存した防犯システムは、停電時に完全に無力化されます。
災害時の防犯全般については、こちらの記事も参考になります。 → 災害時に増える「火事場泥棒」から家を守る|避難前にできる備えと平常時の準備
バッテリー内蔵カメラという選択肢
停電対策として最も分かりやすいのが、内蔵バッテリーで動作するカメラの導入です。
バッテリーカメラは、本体に充電池を内蔵しており、電源に接続しなくても動作します。多くの製品は動体検知時のみ起動する省電力設計になっており、1回の充電で数か月稼働するものもあります。停電中も検知と録画を継続できる点が最大の利点です。
ただし、注意点もあります。常時録画には対応していない製品が多く、検知から録画開始までにタイムラグが生じます。「人が通り過ぎた後の映像しか残っていない」という事態が起きる可能性があるため、設置角度と検知範囲の設計が重要になります。
ソーラーパネル付きモデルであれば、日中に充電しながら運用できるため、長期の停電でも稼働を続けられます。屋外設置で日当たりが確保できる場所であれば、有力な選択肢です。
録画先の問題も考慮が必要です。バッテリーカメラの多くはSDカードにローカル保存するため、カメラが動いていれば録画は継続されます。ただし、クラウド保存に依存する設定の場合、通信が途絶すると映像が残らない可能性があります。ローカル保存とクラウド保存の併用設定が理想的です。
UPS(無停電電源装置)の活用
既存の有線カメラシステムを停電時も維持したい場合、UPS(無停電電源装置)の導入という方法があります。
UPSは、内部にバッテリーを持ち、停電が発生すると自動的にバッテリー給電へ切り替える装置です。パソコンやサーバーの保護に使われることが多いですが、防犯カメラシステムにも応用できます。
カメラと録画機の両方をUPSに接続することが重要です。カメラだけを保護しても、録画機が止まれば映像は残りません。Wi-Fiルーターも接続しておけば、遠隔監視も維持できます。
稼働可能時間は、UPSの容量と接続機器の消費電力によって決まります。一般的な家庭用UPSでは、数十分から数時間程度が目安です。長時間の停電に完全対応することは難しいため、「停電直後の数時間をカバーする」という位置づけで考えるのが現実的です。
UPSにはもうひとつ重要な役割があります。突然の電源断からハードディスクを保護することです。録画中に電源が落ちると、データの破損や機器の故障につながります。UPSがあれば、安全にシャットダウンする時間を確保できます。
通信手段の確保
停電時にスマートフォンで映像を確認したい場合、電源だけでなく通信経路の確保も必要です。
SIM内蔵カメラは、家庭のインターネット回線に依存せず、携帯電話回線を使って通信します。Wi-Fiルーターが停止しても、基地局が生きていれば通信を維持できます。バッテリー内蔵かつSIM対応のモデルであれば、停電時の遠隔監視という点で最も強い構成になります。
ただし、大規模災害時には携帯基地局自体が停電やバックアップ電源の枯渇によって停止する可能性があります。基地局の非常用電源は数時間から24時間程度で尽きるケースが多いため、長期の広域停電では通信も途絶する前提で考えておく必要があります。
SIMカメラの詳細については、こちらの記事で解説しています。 → SIMカードを使った遠隔監視とは、インターネットが要らない防犯カメラ
電源に依存しない対策を組み合わせる
停電対策を考えるうえで最も現実的なのは、「電気がなくても機能する対策」を土台に据えることです。
補助錠によるダブルロックは、電源の有無に関係なく機能します。停電中も、侵入に時間がかかる状態は変わりません。
防犯フィルムもまた、電気を必要としません。ガラスを割りにくくするという物理的な効果は、停電中も維持されます。
防犯砂利は、電源不要でありながら音による警戒機能を持ちます。停電で周囲が静かになっている状況では、むしろ通常時より音が目立つ可能性もあります。
シャッター・雨戸も物理的な防御として有効です。手動式であれば停電中も操作できます。電動シャッターの場合は、手動での開閉方法を事前に確認しておきましょう。
ソーラー式センサーライトは、停電中も夜間に点灯します。街全体が暗い状況では、その効果は通常時以上に大きくなります。
停電に備えて今日から確認しておきたいこと
停電が起きてから慌てないために、平常時に確認しておくべき項目があります。
自宅の防犯カメラは停電時に動作するか(バッテリー内蔵か、AC電源のみか)を確認する。電気錠がある場合、停電時に解錠されるか施錠が維持されるかを把握する。電動シャッターの手動操作方法を確認しておく。懐中電灯・ランタンの動作確認と設置場所の把握。モバイルバッテリーの充電状態を保つ。スマートフォンで防犯カメラを見られる状態か確認する。
こうした確認は、防災の備えと重なる部分が多くあります。防災用品の点検と合わせて、年に1〜2回のタイミングで見直しておくとよいでしょう。
まとめ
防犯設備の多くは電気に依存しています。停電が起きれば、カメラもセンサーライトも警報器も止まる可能性があります。そして停電中は、街が暗くなり、周囲の目が届かなくなり、防犯上のリスクがむしろ高まります。
バッテリーカメラやUPSといった電源対策は有効ですが、それ以上に重要なのは「電気がなくても機能する対策」を持っておくことです。補助錠・防犯フィルム・シャッター・防犯砂利——こうした物理的な対策は、どんな状況でも裏切りません。
電気に頼る対策と、頼らない対策。この両方を組み合わせておくことが、あらゆる状況に対応できる防犯環境につながります。
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