「うちは小さい店だから、たいした被害はないだろう」——そう思っている店舗オーナーは少なくありません。でも実際には、小規模な店舗ほど防犯対策が手薄になりやすく、狙われやすい状況に置かれていることがあります。
警察庁の統計によれば、2024年の万引き認知件数は9万8,292件と前年比5.5%増加しており、2年連続で増加傾向にあります。認知件数はあくまで届け出のあった件数にとどまり、発覚しても警察に届け出なかったケースや、気づかないまま損失として積み重なっているケースを含めると、実態はさらに大きいとされています。全国万引犯罪防止機構の試算では、万引きによる小売業全体のロスは年間3,000億〜4,000億円規模にのぼると推計されています。
万引きだけではありません。夜間の無人店舗を狙った空き巣、レジ周辺の現金を狙った侵入盗、悪質なクレームや迷惑行為など、お店が直面するリスクは多岐にわたります。この記事では、個人・中小規模の店舗が取り組める防犯対策を、状況別に整理して解説していきます。
万引きはなぜなくならないのか
万引きが根絶されない背景のひとつに、「軽い犯罪」という誤解があります。商品を1点持ち出す行為でも刑法上の「窃盗罪」に該当し、発覚すれば逮捕・起訴の対象になります。しかし「見つかっても謝れば済む」「少額なら大事にならない」という認識を持つ犯人が多く、繰り返される傾向があります。
万引き犯の層は近年変化しています。かつては未成年が多いとされていましたが、近年は65歳以上の高齢者が検挙人員全体の大きな割合を占めるようになっており、孤独感や生活不安を背景とするケースも報告されています。一方で、換金性の高い化粧品・酒類・衣料品などを計画的に大量に窃取する「組織的窃盗グループ」による被害も増加しており、1回の被害額が数十万円を超えることもあります。
個人による小額の万引きが積み重なる店舗と、組織的グループに一度に大量被害を受ける店舗——どちらのリスクにも対応できる環境を整えることが、現代の店舗防犯の課題です。
引用元:https://www.alsok.co.jp/corporate/recommend/shoplifting-prevention.html(ALSOK「小売店でのおすすめ万引き防止対策を解説」)
万引きされやすい店舗の特徴を知っておこう
万引きを防ぐには、まず「どんな店舗が狙われやすいか」を把握しておく必要があります。
店員の目が届きにくいレイアウトは、万引きが起きやすい環境の最大の要因です。高い棚で死角が多い、レジから遠い棚コーナーがある、試着室やトイレが監視できない場所にある——こうした構造は、犯人が「見られていない」と判断しやすくします。
入り口と出口が分かれておらず、死角になりやすい動線も問題です。万引き犯は自然な流れで商品を持ち出せる経路を選ぶため、店員が全体を把握しにくい動線設計は被害のリスクを高めます。
少人数営業・ワンオペの時間帯が多い店舗は、特に狙われやすいタイミングがあります。繁忙時間帯に複数の客が一斉に入店して注意をそらす「陽動型」の万引きは、組織的グループがよく使う手口です。
防犯設備が見当たらない店舗は、犯人に「リスクが低い」と判断されます。防犯カメラが設置されていない、ダミーカメラと本物の見分けがつく、「防犯カメラ録画中」の表示がないなどの状況は、抑止効果が薄くなります。
今すぐできる万引き対策① 声かけの徹底
コストをかけずにすぐ始められる最も効果的な対策が「声かけ」です。
来店したお客に「いらっしゃいませ」と声をかけることは、接客としては当然のことですが、同時に「あなたに気づいています」というメッセージにもなります。万引き犯は「見られていない」と感じる状況を好むため、適切な声がけがあるだけで犯行を思いとどまる効果があります。
特に効果的なのは、不審な動きをしている客に対して自然な形で「何かお探しですか?」と声をかけることです。直接的な疑いを示さなくても、店員が近くにいると認識させることで犯行を抑制できます。
声かけが難しい繁忙時間帯や少人数営業の際は、「ただいま店内を巡回中です」などの館内アナウンスも心理的な抑止効果として機能します。
今すぐできる万引き対策② 店内レイアウトの見直し
店舗レイアウトを少し見直すだけで、死角を減らすことができます。
レジの位置を出口近くに配置し、レジから店内全体が見渡せる設計にすることが理想的です。高い棚は視線が通りにくくなるため、通路に面した棚は1.5メートル以下に抑えるか、壁際に集中させると見通しが改善されます。
死角になりやすいコーナーには凸面鏡(カーブミラー)を設置するのも有効です。比較的安価に導入でき、見えにくい場所の状況をレジや作業スペースから確認しやすくなります。
高額商品・換金性の高い商品(酒類・たばこ・化粧品・文具など)は、レジ近くや店員の目が届きやすい場所に陳列する配置が基本です。棚の奥や死角になる場所への陳列は避けましょう。
今すぐできる万引き対策③ 防犯カメラの適切な設置
防犯カメラは、万引き対策として最も費用対効果が高い設備のひとつです。「撮影されている」という事実が、犯行を思いとどまらせる最大の抑止力になります。
設置場所のポイントは3か所です。まず入口・出口には必ず設置します。入退店の映像が記録されることで、不審者の特定に役立つほか、「このお店は全員が記録されている」という印象を与えます。次にレジ周辺は、現金の取り扱いやトラブルの記録という観点からも重要です。そして死角になりやすいコーナー棚の付近にも設置することで、店舗全体をカバーします。
カメラの存在を明示することが大切です。「防犯カメラ設置・録画中」のステッカーやサイネージを目立つ場所に設置することで、「記録されている」という認識を犯人に与えます。カメラがあっても告知がなければ、抑止効果は半減します。
スマートフォンと連携できるネットワークカメラを導入すれば、店舗を離れている時間帯でも映像をリアルタイムで確認できます。異常を検知したときに通知が届く機能を活用すれば、不在中の店舗の状況を素早く把握できます。
閉店後・不在時の空き巣対策
万引きは営業時間中の問題ですが、空き巣・夜間侵入は閉店後のリスクです。飲食店・小売店・美容室など、夜間に無人になる店舗は侵入窃盗の対象になり得ます。特に現金をレジに保管したまま閉店する習慣がある店舗は、狙われやすい状況にあります。
閉店時の現金管理として、レジに現金を残さないことが最大の対策です。売上金は毎日持ち帰るか、時間外入金対応のある金融機関のATMを活用する習慣をつけましょう。レジを空にしておくと、「取っても何も得られない」と判断されるため、侵入動機を下げることにもなります。
シャッター・補助錠の活用は物理的な侵入抑止として効果的です。玄関・勝手口・窓すべての施錠を閉店前に確認するチェックリストを作成しておくと、閉め忘れを防げます。
屋外の防犯カメラとセンサーライトの組み合わせは、夜間の下見・侵入準備段階での犯行を抑止します。建物の外周、駐車場の出入口、搬入口付近など、死角になりやすい場所をカバーするよう配置しましょう。
営業時間外でもスマートフォンで映像確認・通知を受け取れるネットワークカメラは、夜間の店舗管理にとって特に有効なツールです。警備会社との契約と組み合わせると、より安心感が高まります。
迷惑行為・トラブル時の記録として
防犯カメラは万引き・空き巣対策だけでなく、クレーム対応・トラブル発生時の記録としても機能します。
「商品を買っていない」「釣り銭を受け取っていない」「店員に失礼な対応をされた」といったトラブルが起きた際、映像の記録があれば事実確認の根拠になります。悪意ある虚偽クレームや不当要求への対応に、映像記録が大きな助けになったという事例は実際に多くあります。
また、近年問題になっているSNSでの悪質な撮影・迷惑行為(いわゆる「迷惑系」)への対応にも、店舗側が映像を保持していることが有効な抑止力になります。
レジ前・カウンター周辺をカバーするカメラは、こうした用途でも役立ちます。「記録されている場所」という環境を作ることが、さまざまなトラブルの抑止につながります。
従業員との情報共有と日常的な防犯意識
設備を整えるだけでなく、スタッフ全員が防犯意識を持って働ける環境を作ることも重要です。
万引きの手口・発生しやすい状況・対応方法についての情報をスタッフと定期的に共有しましょう。「怪しいと思っても自分だけで対応しない」「声かけして様子を見る」「単独で身体を拘束しない」という行動指針を明確にしておくことで、スタッフが適切に行動できます。特に、万引き犯を追いかけたり力ずくで制止しようとすると、暴行・傷害事件に発展するリスクがあります。映像を記録し、警察に届け出るという流れを徹底することが安全です。
被害が発生した際は、金額の大小にかかわらず警察に届け出ることをおすすめします。届け出の積み重ねが、地域の犯罪情報の共有や同一犯の検挙につながることがあります。
まとめ
店舗の防犯対策は、大がかりな設備投資がなくても始めることができます。声がけの徹底・レイアウトの見直し・防犯カメラの適切な設置・閉店後の施錠と現金管理——これらを組み合わせることで、万引き・空き巣双方のリスクを大幅に下げることができます。
「うちは大丈夫」という油断が、最も大きなリスクです。お店を守ることは、日々の積み重ねです。
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