「補助金を申請したけれど、予算に達していて受付が終わっていた」「うちの自治会は要件を満たしていなかった」「申請したが採択されなかった」——防犯カメラの設置を検討する中で、こうした壁にぶつかることがあります。
補助金は便利な制度ですが、万能ではありません。予算に限りがあり、要件があり、募集期間も限定的です。そして、地域の防犯上の必要性は、補助金のスケジュールに合わせて生じるわけではありません。
この記事では、補助金が使えない場合に自治会が取れる選択肢を整理します。
選択肢① 次年度の募集に向けて準備する
最も素直な選択が、次の機会を待つことです。ただし、ただ待つのではなく、準備を進めておくことが重要です。
**今年度の反省を活かせます。**なぜ間に合わなかったのか、なぜ採択されなかったのか。理由を整理しておけば、次回の申請の精度が上がります。
**時間をかけて書類を整えられます。**見積もりの取得、設置場所の検討、警察への相談、住民への説明、管理規程の作成——これらを丁寧に進める余裕が生まれます。締切に追われて不十分な内容で申請するより、はるかに良い結果につながります。
**総会のタイミングを合わせられます。**多くの自治体で団体内の合意が求められますが、総会が年1回の団体では、そのタイミングを逃すと1年待つことになります。次年度の申請を見据えるなら、直近の総会で議題にしておくことができます。
**採択されやすい条件を整えられます。**名古屋市や広島市のように、防犯活動の実績を考慮して対象団体を決定する自治体があります。1年かけてパトロールなどの活動実績を積むことは、次回の申請の説得力につながります。
申請準備の進め方については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 防犯カメラ補助金の申請書類、何をどう揃える?|自治会役員のための準備ガイド
選択肢② 別の制度を探す
自治体の防犯カメラ補助金以外にも、使える可能性のある制度があります。
都道府県の制度を確認してみてください。市町村の補助に上乗せする形で県が支援している場合もあれば、県が独自に制度を持っている場合もあります。
コミュニティ助成事業という選択肢もあります。宝くじの社会貢献広報事業として、コミュニティ活動に必要な備品の整備等に対して助成を行う制度です。防犯関連の設備が対象になる場合があります。自治体の企画政策課などが窓口になっていることが多いようです。
防犯灯の補助制度も確認する価値があります。近年は「カメラ付き防犯灯」が製品化されており、防犯灯の補助制度の対象になる自治体もあります。市川市では令和5年度からカメラ付き防犯灯が補助対象に加わりました。
まちづくり関連の助成が使える場合もあります。地域の安全・安心に関する取り組みを支援する制度は、防犯カメラという名称でなくても該当することがあります。
まずは自治体の窓口で、「防犯カメラの設置に使える制度は他にないか」と相談してみることをおすすめします。担当課をまたいだ情報を持っている場合があります。
選択肢③ 自動販売機の売上を活用する
意外に知られていない方法として、飲料自動販売機を活用する仕組みがあります。
横浜市の補助金の手引きでも、この方法が参考として紹介されています。自治会町内会が自動販売機の設置場所を提供できる場合、その売上や利益によって防犯カメラの設置費用等をまかなう取り組みをしている事業者があるというものです。
**補助金の制約を受けません。**予算上限、募集期間、審査——こうした要素に左右されずに設置できる可能性があります。
**継続的な収入になる場合もあります。**設置費用だけでなく、その後の電気料金や維持費に充てられるケースもあるようです。
ただし、**条件は事業者によって異なります。**自動販売機を置くスペースがあるか、十分な売上が見込める立地か——こうした条件が関わってきます。複数の事業者に問い合わせて比較することをおすすめします。
また、自動販売機の設置自体について、地域内の合意が必要になる場合もあります。景観、騒音、ゴミの問題——こうした懸念が出る可能性も考慮しておくべきでしょう。
選択肢④ 自主財源での設置を検討する
補助金を待たずに、自治会の予算で設置するという判断もあり得ます。
**防犯カメラの価格は下がっています。**かつては1台の設置に数十万円が必要でしたが、現在は選択肢が大きく広がっています。特に、工事を伴わないタイプであれば、費用は大幅に抑えられます。
設置台数を絞るという考え方もあります。「地域全体をカバーする」という理想を一旦置いて、最も必要性の高い1か所から始める。効果を確認してから追加するという段階的な進め方は、費用面でも合意形成の面でも現実的です。
工事不要のタイプを選ぶことで、費用は大きく変わります。ソーラー充電式であれば電源工事が不要ですし、SIM内蔵タイプであれば通信環境の整備も不要です。ただし、設置場所の条件(日照、電波状況)を事前に確認する必要があります。
リースやレンタルという方法もあります。初期費用を抑えられ、保守が契約に含まれる場合もあります。月額での支出は年間予算に組み込みやすいという利点もあります。
選び方の基本については、こちらの記事で解説しています。 → 防犯カメラを初めて選ぶ方へ|種類・機能・選び方の基礎知識をまとめて解説
選択肢⑤ カメラ以外の対策から始める
そもそも、防犯対策はカメラだけではありません。
街路灯・防犯灯の整備は、費用対効果の高い対策です。暗い場所をなくすことは、それ自体が犯罪抑止につながります。多くの自治体に防犯灯の補助制度があり、防犯カメラより制度が充実している場合もあります。
見通しの改善も有効です。伸びすぎた樹木の剪定、放置物の撤去——こうした環境整備は、費用をほとんどかけずにできます。死角をなくすことは、防犯の基本です。
パトロールの実施は、人の目による抑止です。定期的に地域を歩くこと自体が、「見られている」という状況を作ります。また、この活動実績が、次回の補助金申請において有利に働く可能性もあります。
注意喚起の掲示も一定の効果があります。「防犯パトロール実施中」「不審者にご注意ください」——こうした掲示は、地域が防犯に取り組んでいることを示します。
住民への啓発も大切です。施錠の徹底、不審者を見かけたときの通報——基本的な行動が地域全体に浸透していれば、それ自体が防犯力になります。
優先順位をどう考える?
限られた資源をどこに配分するか。この判断には、根拠が必要です。
警察に相談することが最も有効です。地域のどこで何が起きているか、どの時間帯に多いか——こうした情報は、自治会が独自に集められるものではありません。所轄の警察署の生活安全課で相談を受け付けています。
住民の声を集めることも参考になります。「あの道が暗くて怖い」「この曲がり角で不審者を見た」——日常的に感じている不安は、実態を反映していることが多いものです。
実際に歩いてみることも大切です。特に夜間、地域を歩いてみると、昼間とはまったく違う印象になります。街灯が届かない区間、人通りが途切れる場所——こうした現場感覚は、机上の検討では得られません。
地域のカメラが果たす役割については、こちらの記事でも触れています。 → あなたの家のカメラが事件を解決するかもしれない|リレー捜査と地域防犯の話
焦らないことも大切
補助金が使えなかったからといって、拙速に進める必要はありません。
設置場所を誤ると、効果は限定的になります。「とりあえず設置した」カメラが、肝心な場面を映していなかったという事態は避けたいところです。
**合意形成を飛ばすと、後で問題になります。**住民の理解を得ないまま設置すれば、「監視されている」という反発を招きかねません。近隣関係の悪化は、地域の防犯力を下げる要因にもなります。
**運用体制がないと、機能しません。**誰が管理するのか、どう点検するのか——これが決まっていなければ、数年後には放置された設備になります。
補助金を待つ期間は、こうした準備を整える時間だと考えることもできます。急いで設置するより、しっかり準備してから設置する方が、結果的に良い結果につながることも多いはずです。
まとめ
補助金が使えない場合でも、選択肢はいくつかあります。次年度に向けた準備、別の制度の活用、自動販売機方式、自主財源での設置、カメラ以外の対策——地域の状況に応じて検討してみてください。
大切なのは、優先順位を根拠をもって判断することです。警察への相談、住民の声、実際に歩いての確認——これらを踏まえたうえで、何から始めるかを決めることをおすすめします。
そして、補助金を待つ期間を準備期間として活用するという考え方も有効です。設置場所の検討、合意形成、運用体制の設計——これらを整えておけば、次の機会に確実な申請ができます。
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