防犯カメラの補助金というと、市区町村の制度を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、都道府県警察が実施している補助制度もあります。大分県警の「街頭防犯カメラ設置事業」がその例です。
市の制度と県警の制度、どちらを使うべきか。あるいは両方の検討ができるのか。この記事では、警察が関わる補助制度の特徴と、市町村の制度との違いを整理します。
なお、制度の内容は年度によって変わりますので、実際の申請にあたっては必ず各機関の公式情報をご確認ください(本記事は2026年8月時点の情報です)。
大分県警の街頭防犯カメラ設置事業
まず、具体例を見てみましょう。
大分県警では、子供や地域の皆さんが不安を感じる犯罪等の未然防止を図るため、地域防犯の目的で新たに防犯カメラを設置する自治会等に対し、設置費用の一部を補助する事業を行っています。
補助率は補助対象費の2分の1で、上限は1団体50万円です。
募集期間は令和8年4月8日から同年12月1日まで。ただし、募集期間中であっても予算限度額に達した時点で本年度事業は終了するとされ、最低15団体の受理が見込まれています。
運用面で興味深いのが、7月までは各警察署1団体程度を優先し、8月以降は全県下申請受理順という点です。年度の前半は地域バランスを考慮し、後半は先着順という設計になっています。
引用元:https://www.pref.oita.jp/site/keisatu/chiikimimamoriryokukoujyoubouhannkamera.html(大分県「令和8年度『街頭防犯カメラ設置事業』の開始について」)
警察が実施することの意味
警察が補助事業を行うことには、いくつかの特徴があります。
犯罪発生状況を最も把握している組織です。どの地域で何が起きているか、どのような手口が増えているか——こうした情報を持っています。設置場所の妥当性を判断する材料が、行政より豊富といえます。
捜査での活用を前提とした視点があります。どのような映像が実際に役立つのか、どの角度から撮れば人物を識別できるか——実際に映像を使う立場からの知見があります。
地域バランスへの配慮も、警察署単位という枠組みだからこそ可能です。大分県警の「各警察署1団体程度を優先」という運用は、特定地域への集中を避ける工夫といえます。
申請窓口が警察という制度もある
補助事業とは別に、申請窓口自体が警察関係の団体という自治体もあります。
鹿児島市の街頭防犯カメラ設置費補助事業では、申請書の提出先が管轄の地区防犯団体連合会とされています。中央地区防犯団体連合会は鹿児島中央警察署内、西地区は鹿児島西警察署内——というように、いずれも警察署内に事務所が置かれています。
設置場所についても、事前に同団体に相談することが求められています。
この仕組みでは、警察の知見を活かした場所選定がしやすくなります。市役所の窓口では得られない具体的な助言が期待できるでしょう。
鹿児島市の制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 鹿児島市の街頭防犯カメラ補助は申請先が警察署内|地区防犯団体連合会が窓口
警察への相談が要件になっている制度も
補助の実施主体が行政であっても、警察への相談が要件とされている制度は多くあります。
さいたま市では、申請時の添付書類として「警察署から助言を受けていることが分かる書類」が求められています。
奈良市では、「事前に管轄の警察署へ防犯カメラの設置場所等について相談していただきますようお願いします」と案内されています。
福岡市でも、効果的な設置場所について警察署または専門家に相談できるとされています。
相模原市では、市内で不審者の目撃情報が度々報告されているという状況が制度の背景として説明されており、警察との情報共有が前提になっていることがうかがえます。
つまり、実施主体が誰であれ、警察との連携は防犯カメラ設置において標準的なプロセスになっているということです。
一時的な貸与という支援もある
補助金以外の形での支援もあります。
浜松市の資料では、静岡県警が自主防犯活動を促進するため、可搬式の防犯カメラを6か月間設置する事業を実施していることが触れられています。そして、期間経過後も継続するには自治会が自ら設置する必要があるため、市の補助制度が設けられたという経緯が説明されています。
この仕組みは、段階的な導入という点で合理的です。
まず貸与を受けて効果を確認する——実際にカメラを設置してみて、どのような映像が撮れるか、地域の反応はどうかを確かめられます。
その結果をふまえて本設置を判断する——効果が確認できれば、自治会として設置を進める判断がしやすくなります。総会での説明にも説得力が生まれます。
お住まいの地域に同様の事業がないか、警察署に問い合わせてみる価値はあるでしょう。
市の制度と併用できるか
複数の制度がある場合、併用できるかどうかは重要な論点です。
多くの制度で、他の補助金との重複は認められません。
大分市の制度では、補助対象事業について国、県その他の機関から同様の趣旨の補助金等の交付を受ける場合の扱いが定められています。
堺市の事業者向け制度でも、「国および地方公共団体等の他の補助制度による交付を受けていないもの」が要件とされています。
つまり、同じカメラに対して二重に補助を受けることはできないというのが基本です。
ただし、設置場所を分ければ別の話になる可能性があります。「A地点は市の制度、B地点は県警の制度」という使い分けができるかどうかは、各機関に確認が必要です。
どちらを選ぶべきか
複数の制度が使える場合、判断のポイントを整理します。
補助額を比較することが基本です。大分市の場合、市の制度も県警の制度も補助率2分の1・上限50万円と同水準ですが、自治体によっては差があります。
申請時期を確認することも重要です。市の制度は年度前半で締め切られ、県警の制度は12月まで受け付けている——といった違いがあれば、間に合う方を選ぶことになります。
要件の違いも比較材料です。大分市の制度では「映像の3分の2以上が公道」という要件がありますが、県警の制度では異なる基準かもしれません。自分たちの計画がどちらの要件に合うかで判断できます。
手続きの負担も考慮すべきでしょう。必要書類の量、事前相談の有無、審査の厳しさ——実務的な負担は制度によって異なります。
相談は複数の窓口へ
結論として、両方の窓口に相談してみることをおすすめします。
市の担当課では、市の制度の詳細に加えて、県や県警の制度について情報を持っている可能性があります。
警察署の生活安全課では、設置場所についての助言に加えて、県警の補助事業について案内してもらえるでしょう。
どちらか一方だけを見て判断するより、両方の情報を得たうえで検討する方が、適切な選択ができます。
そして、設置場所の相談は必ず警察に行ってください。補助制度をどちらで使うかにかかわらず、実効性のあるカメラにするために欠かせないプロセスです。
設置場所の選定については、こちらの記事も参考になります。 → 「防犯診断」って何をするの?プロが自宅を見るときにチェックしているポイント
まとめ
防犯カメラの補助制度は、市区町村だけでなく、都道府県警察が実施している場合もあります。大分県警の街頭防犯カメラ設置事業は、補助率2分の1・上限1団体50万円という内容です。
また、鹿児島市のように申請窓口が警察関係の団体という制度や、さいたま市・奈良市のように警察への相談が要件とされている制度もあります。
いずれにせよ、警察との連携は防犯カメラ設置において標準的なプロセスです。犯罪発生状況を把握し、捜査での活用を想定した助言が得られる——この価値は、補助金の有無にかかわらず大きいものです。
まずは市の担当課と警察署、両方に相談してみることをおすすめします。
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