防犯ブログ

災害時に増える「火事場泥棒」から家を守る|避難前にできる備えと平常時の準備

地震・台風・大雨——災害が起きたとき、真っ先に考えるのは命の安全です。それは当然のことで、何より優先されるべきことです。しかし、避難したあとの「留守になった家」に何が起きるかまで、考えたことがある方は少ないかもしれません。

災害時には、被災地で窃盗被害が増加することが繰り返し確認されています。宮城県警のデータによれば、東日本大震災が発生した2011年3月11日から30日までの約3週間で、窃盗被害の届け出は290件、被害総額は1億円を超えました。警察庁の白書でも、津波被害を受けた沿岸地域や避難区域で、無人となった民家・店舗を狙った窃盗事件が多発したことが記録されています。

災害の混乱に乗じた犯罪は「火事場泥棒」と呼ばれ、被災者の心を踏みにじる卑劣な行為です。この記事では、災害時に犯罪が増える理由と、平常時・避難前にできる備えを整理します。

なぜ災害時に窃盗が増えるのか

災害時に空き巣・窃盗が増加する背景には、いくつかの構造的な要因があります。

警察力が犯罪抑止に回らない状況が生まれます。災害発生直後の警察は、人命救助・避難誘導・交通整理・被害状況の把握といった業務に集中せざるを得ません。通常であれば行われる巡回パトロールが手薄になり、犯行が発覚するリスクが下がります。

建物の損壊で侵入が容易になることも大きな要因です。地震で窓ガラスが割れた、ドアが歪んで閉まらなくなった、屋根や壁が破損した——こうした状態の家は、鍵をかけていても実質的に無防備です。

避難によって地域全体が無人になる状況も、犯行にとって好条件になります。近隣住民の目がないため、犯人が堂々と作業できてしまいます。家財を運び出していても、「被災した住人が片付けをしている」と誤解されやすいという指摘もあります。

被害の発覚が遅れることも問題です。避難生活が長期化すると、自宅の状況を確認できるのは数日後〜数週間後になります。その間に繰り返し被害を受けても気づけず、被害の全容把握が困難になります。

引用元:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h24/honbun/html/of130000.html(警察庁白書「被災地における安全・安心の確保」)

平常時からできる備え

災害はいつ起きるかわかりません。だからこそ、平常時のうちに備えておくことが最も現実的な対策になります。

貴重品の保管場所を整理しておくことが基本です。避難時に持ち出すもの、家に残さざるを得ないものを事前に区分しておきましょう。現金・通帳・印鑑・保険証券・貴金属など、持ち出すべきものは一箇所にまとめておくと、緊急時に慌てずに済みます。

重要書類のデータ化も有効な備えです。保険証券・権利書・身分証明書などをスキャンまたは写真撮影し、USBメモリやクラウドに保存しておきましょう。原本が失われた場合や、被害の申請時に役立ちます。データを非常持ち出し袋に入れておくと、避難時にすぐ持ち出せます。

家財の記録を残しておくことも重要です。室内の写真を撮っておくと、盗難や損壊が発生した際に「何があったか」を示す証拠になります。保険金請求の際にも有用な資料になります。年に1回程度、部屋ごとの写真を撮影しておく習慣をつけておくとよいでしょう。

建物の耐震・防犯性能の点検も、平常時にしかできない備えです。窓ガラスに飛散防止フィルムを貼っておけば、地震で割れた際の被害を減らせるとともに、防犯効果も兼ねられます。補助錠の設置や、老朽化した錠前の交換も検討しておきましょう。

避難する前にできること

災害が発生し、避難が必要になった場面での対応です。ただし、命の安全が最優先であることは大前提です。津波・火災・土砂災害など、一刻を争う状況では、以下の作業を省略して直ちに避難してください。

時間に余裕がある場合の施錠確認として、玄関・勝手口・全ての窓の施錠を確認します。慌てて避難する際に、窓の施錠を忘れるケースは非常に多くあります。

シャッター・雨戸を閉めることも有効です。物理的に侵入を難しくする効果があります。ただし、雨戸やシャッター自体の施錠を忘れると、逆に犯人が作業する姿を外から見えなくする「目隠し」になってしまうため、必ずロックまで確認してください。また、すでにドアや窓が破損して外から損傷が明らかな場合は、雨戸を閉める意味が薄れます。

貴重品を持ち出すことも、可能な範囲で行いましょう。避難生活では現金や身分証が必要になる場面が多く、防犯上も持ち出しておく方が安全です。

避難先を家族・近隣に伝えることも大切です。自宅の状況を誰かに確認してもらえる体制があれば、異変の早期発見につながります。

避難所での防犯にも注意

自宅だけでなく、避難所での盗難被害も報告されています。多くの人が集まる場所であり、プライバシーが確保しにくい環境では、貴重品の管理に注意が必要です。

貴重品は常に身につけて持ち歩くことが基本です。トイレや配給の列に並ぶ際に荷物を置いたままにすると、盗難のリスクがあります。就寝中にバッグから中身を抜き取られるケースも報告されているため、財布や重要書類は身体に近い場所で管理しましょう。

また、避難所では女性や子供が被害に遭う性犯罪・つきまといのリスクも指摘されています。一人でトイレに行かない、暗い場所を避ける、周囲の大人と情報を共有するといった対応が推奨されています。

防犯カメラは災害時にも機能するか

自宅に防犯カメラを設置している場合、災害時にも一定の機能を果たすことがあります。

停電時の動作が課題になります。通常の電源接続型カメラは、停電時に動作を停止します。バッテリー内蔵型・ソーラー充電式のカメラであれば、停電中も稼働を継続できる可能性があります。災害への備えという観点では、こうした電源に依存しないタイプのカメラを検討する価値があります。

通信環境の確保も重要です。Wi-Fiルーターが停電で停止すれば、ネットワークカメラの遠隔確認はできなくなります。SIMカード内蔵で携帯回線を使用するタイプのカメラであれば、家庭のインターネット環境が停止しても通信を維持できる場合があります。ただし、基地局が被災している場合は通信が途絶するため、万能ではありません。

記録としての価値は災害後に発揮されます。避難中に自宅で何が起きたか——不審者の侵入、盗難の状況——を映像で確認できれば、警察への被害届や保険請求の際の重要な証拠になります。

避難後に自宅の状況をスマートフォンから確認できることは、精神的な安心にもつながります。「家がどうなっているかわからない」という不安は、避難生活における大きなストレスのひとつです。

地域での協力体制

災害時の防犯において、地域の連携は極めて重要です。警察のリソースが限られる状況では、住民同士の見守りが実質的な抑止力になります。

過去の被災地では、住民が交代で巡回や見張りを行い、犯罪の抑止に努めた地域があります。自治会・町内会レベルで「災害時にどう連携するか」を事前に話し合っておくことは、防災と防犯の両面で価値があります。

また、被災地には支援を装った悪質業者も現れます。「補助金の申請を代行します」「屋根を無料で点検します」といった訪問には注意が必要です。災害後の混乱に乗じた修理詐欺・点検商法は各地で報告されており、契約を急かす業者は疑ってかかることが大切です。

まとめ

災害時の防犯は、「災害への備え」の一部として考えるべきものです。平常時の貴重品整理・重要書類のデータ化・家財の記録、そして避難時の施錠確認——これらは特別な設備がなくても、意識ひとつで実践できます。

命を守ることが最優先であることを前提に、その次に来る「財産と生活を守る備え」を、今のうちに整えておきましょう。

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